スター・ウォーズ サーガ 完結編となる エピソード3/シスの復讐 が公開された2005年、メインストリームを盛り上げた影の立役者にスポットをあてるインタビュー・シリーズ。
第1回目は株式会社トミーダイレクト プロデューサーの白井タカヒコ氏にお話をお伺いしました。
―― 昨年を振り返って、エピソード3 関連ではまず4月2日の一斉発売と「カウントダウン プレミアムイベント」がありましたね。
白井:
毎年 5月と10月に米国ロードアイランド州にあるハズブロの本社に定期的に行くのですが、各マーケッターが準備している 30以上のブランドの半年後、1年後くらいの商品のプレゼンテーションが行われるんです。2004年10月くらいにエピソード3関連アイテムがほぼ明らかになって、2005年夏くらいまでのリストを入手したので、それを受けて準備をはじめて 11月には発売日や店舗での販促プランを決定しました。3月にはトイザらスさんのイベントが決まっていましたので、リリースの案内だとか店舗の準備だとか、一気に 40以上のアイテムを発売するので忙しかったですね。
―― イベントの反響はどうでしたか。
白井:
エピソード2 に引き続きトイザらス 亀戸店さんで深夜にカウントダウン販売を行いまして、当初 300 から 350 くらいのお客様が来ればと予想していたのですが、結果的には 500 人以上が来場されました。大きな特設スクリーンを置いてカウントダウンを行なったりとか、エピソード2 の時にはやっていない事にも挑戦して、お客様にも好評でした。エピソード3 公開へ向けての非常に良いキックオフとなったと思います。
―― エピソード3 関連アイテム発売と同時にキャンペーンを開始されましたね。
白井:
4月2日のエピソード3 関連アイテム解禁日から同時に「スター・ウォーズ プレゼント オブ ザ シス キャンペーン」を始めました。本当は告知を前からしたかったのですが、エピソード3 に関する一連の宣伝が 4月からとの規制がありました。でも発売日に告知ではつらいという事もあって、フィギュア誌さんの発売日に合わせて、日本だけ特別に許可をいただき、3月24日をエピソード3 関連アイテムの告知解禁日としました。この交渉は非常に大変でした。
―― キャンペーンの反響はどうだったでしょうか。
白井:
それでも告知が直近だったこともあってキャンペーン開始当初の応募は鈍かったのですが、セレブレーション III限定フィギュアのトーキング・ダース・ベイダーの評判が良かったですし、オリジナルで企画したディレクターズ・チェアも好評でした。それとオリジナルデザイン Tシャツの方も話題となり、人気アパレルの BountyHunterさんからスタートして 4月、5月、6月と続けました。
―― Tシャツを企画されるにあたり苦労された点はありましたか。
白井:
毎月変わりでオリジナル Tシャツをプレゼントとして制作したわけですが、これも 2004年から各アパレルメーカーさんの方と相談させてもらっていました。玩具メーカーですが特別に販促のみならばTシャツを作っても良いという許可をいただけたのです。アパレルメーカーさんとは前々から知り合いというわけでもなくて、店舗の方へ直接電話をして会っていただくところからのスタートでした。しかしながらスター・ウォーズが好きなデザイナーさんを中心にお願いしたので皆さんが非常にこだわりを持ちながら、色々と制約がある中で楽しみながら作っていただけたので良かったです。
――「エピソード3 チャリティープレミア試写会」でも初の試みがありましたね。
白井:
日本でもライセンシー会社が多くなったということで 20世紀FOX映画さんと小学館プロダクションさんの方で企画を進めていただき、初めて試写会ホールと併設して関連グッズ販売コーナーとして「スター・ウォーズ ライセンス・グッズ 展示販売会」が行われました。当社としては通常、先行発売だとかオリジナルの商品はもちろん、オリジナルのパッケージまたはオリジナルのペイントでさえも許可が下りないのですが、ハズブロ社の方から、せっかく日本の公開前にそういうイベントがあるのに何かやらないのかと言われまして。
―― それは願ったり叶ったりですね。
白井:
何か先行発売などをしても良いかと打診したところ、500体記念ダース・ベイダー フィギュアを勧めてくれて、500個ほどの先行発売ならと許可が出ましたので、プロダクション・サンプルとして作られた中から分けてもらって販売致しました。十分な告知をしていない中、多くの方に購入していただき完売となりました。
―― 先行発売の時点では米国でもまだ発売されていませんでしたよね。
白井:
あの時点では米国販売向けの商品が船便で渡っている時でした。通常、第1生産分が米国販売分で、第2生産分が日本やカナダなどなのですが、この時は早く先行発売できました。ただ、この後に一般発売は当初、先行発売から 1ヶ月後程度の予定だったのですが、生産のトラブルや出荷のトラブルが続きまして、遅れに遅れて 8月になってしまいご迷惑をお掛けしてしまいました。
―― ちょうど前日に試写会の準備でホールにいましたが、お隣の展示販売会の準備も慌ただしそうでした。
白井:
前日は別イベントが会場で行われていたので、当日にかなりのスタッフ数で搬入しました。私個人がちょうど 3月から映画公開が近づくにつれて多忙が続き体力が持ちませんで(苦笑) 当日は 39.8度の熱が出てフラフラになっていました。
―― 501st Legion, Japanese Garrison の慰問活動では訪問先の子供達へオモチャをご提供していただいたり御協力いつもありがとうございます。「エピソード3 試写会チケット贈呈式」ではプレスリリースまでお世話になり感謝しています。
白井:
皆さんの活動のお力になれたらということで御協力させていただいています。私も今まであまりやったことはなかったのですが、昨年はプレスリリースを流す頻度も多かったので御協力できればと思いお手伝いさせていただきました。
―― そして、いよいよエピソード3 が公開されたわけですがキャンペーンも第2弾が始まりました。
白井:
映画がいよいよ公開されるという事で、別のキャンペーンを展開することにしました。実際 6ヶ月に渡るキャンペーンは当社でもやったことがなかったのですが、コンベンション限定フィギュアのホログラフィック・レイアと、当社オリジナルの商品として「スター・ウォーズ G-SHOCK」を用意しました。応募がもの凄くて、カシオ時計さんに用意していただいたキャンペーン用の2本セットの特殊パッケージに反響が大きく、いまだにどういうパッケージに入っていたのかファンの方に聞かれることもあります。プレゼント Tシャツの方も引き続き、Revolverさん、Realizeさん、GDCさんと人気のあるアパレルメーカーさんにお願いをして展開しました。
―― 「スター・ウォーズ G-SHOCK」の一般販売もかなり好評だったようですね。
白井:
当社の通販サイトがあるのですが、販売開始から5日間で完売しました。特にダース・ベイダー版の方は売れ行きが早かったですね。それぞれ 1000本ずつ生産したのですが、アート オブスター・ウォーズ展や映画館でも販売させていただき、早い時期に売り切れとなり好評でした。今後、機会があればまた第2弾を作りたいと考えています。
―― エピソード3 のDVDが発売された同時期に「クローン・トルーパー 501st部隊バージョン」の限定先行発売が開催。
白井:
エピソード3 では映画劇中に登場するものと設定のみのものを含めるとかなりのバリエーションのクローン・トルーパーが存在するのですが、現在のハズブロ社担当者がかなりのトルーパー好きで、全部出したいとの考えで色々なバージョンが割と早い時期からフィギュア化されるのが決まっていました。青いラインのクローン・トルーパーは前人気が非常に高く、ちょうどエピソード3の DVD発売があったので少量でしたが、ビッグカメラ 有楽町店さんの方で先行発売しました。
―― 最初、501st の表記使用を依頼されてきた時は驚いたのですが(笑)
白井:
501stの皆さんと以前から青いラインのクローン・トルーパーが出れば良いねとお話していて、ちょうどフィギュア化があったのと、日本国内版の商品名付けでいつも苦労している背景がありました。米国ですとアナキン・スカイウォーカーが出て、次のバージョンもアナキン・スカイウォーカー、その次のバージョンもアナキン・スカイウォーカー と型が変わってもアナキン・スカイウォーカーだけだったりするんです。日本では分類できた方が好まれる傾向もありますし、小売店の方としても同一名だけでは混乱するので区別化する上でも、キャラクター設定に合わせた表記にしました。
―― 年2回開催されている「ワールドキャラクター・コンベンション」へも毎回出展されていますね。
白井:
ワールドキャラクター・コンベンションは主催者側で毎回トイズ・エイドなどを企画して参加メーカーさんなどからの提供品を恵まれない子供達へ寄付したりしているので、当社も協力させていただいています。集客に繋がるものがあれば限定品だとか用意させていただいていまして、昨年12月開催の際にはジェントル・ジャンアント社のクリアーバスト・アップスを販売させていただきました。毎回出展している度に近々に発売するスター・ウォーズ フィギュアを展示して、ご覧いただいたお客様からは毎回好評をいただいています。
―― 昨年、あまり一般には知られていないところで「トミカ スター・ウォーズ」がありましたが。
白井:
当社にキャラクターの版権などをコントロールしているコンテンツ事業部という部署がありまして、その中で当社株主優待向けの企画がありました。実はエピソード2 の時にいくつかオリジナルの商品を進めていて、その中にダース・ベイダーや R2-D2 の「黒ひげ危機一髪」なんかもあったわけですが、トミカも当時の担当から話は出ていたんです。グラフィックだとか車種だとかの話しを詰めていて、ルーカス側でも同様の商品を米国メーカーにライセンスするかと言う話しもあったので、計画自体頓挫してしまいましたが、今回 1台だけ実現しました。
―― スター・ウォーズ ファンやコレクターにとっては限定物も気になるのですが、限定数などどのように決められていくのでしょうか。
白井:
アイテムによって違いますが、ハズブロと協議して数量が決まったり、各国市場で配分になってしまったり、またルーカス側からの指示で数量が決められたりしています。日本側が希望している数だけを配分されることは無く、その都度、フィギュアに応じて交渉していますが制約も多いです。前述のクローン・トルーパー 501st部隊バージョンについても、人気が高く各国で取り合う形になってしまい、日本版も数を確保するのが大変でした。
―― 限定フィギュアと言っても海外ストア限定など多種多様にあるので大変そうですね。
白井:
海外限定物の中でもルーカス・オンライン取り扱い限定フィギュアの販売については、今年に入ってルーカス・オンラインのみの取り扱いにする、と連絡が来たのですが、日本版が出ないとなると日本のファンの方が苦労してアメリカまで行って購入するとか、並行輸入された物を何倍かの値段で買わなければいけないことになるので再検討してくれるように交渉を繰り返しました。結果、今年の夏以降のアイテムは再び取り扱い可能となりました。
―― 以前のようにフィギュアの再販はないのでしょうか。
白井:
昨年も一部のキャラクターについては再販を行いました。しかし最近は扱う商品数も多く、次の商品がどんどん発売されるので、アイテムによってリピートするものもありますが、基本的には1回のみの入荷で売り切りとなるものが多いです。
―― フィギュアの発売日は度々遅れますが何が原因なのでしょうか。
白井:
大体は生産工場の都合や承認が思うように行かなかったりだとかが多いです。当社は雑誌などで商品を発表する場合、発売の 2ヶ月前に準備をしますが、スケジュールが直近で変更されることが多く、発売が遅れることが多々あります。自社製品ですと最終的には調整できる場合もあるのですが、ハズブロ社の都合で遅れた場合、そのままスライドしていくので難しいですね。日本側ではなかなか調整が難しいものなのですが、それをするのも国内代理店の使命と思っていますので、もっと改善していけるよう日々努力していきます。
―― 今後の展開について話せる範囲で教えていただけますか。
白井:
来年のスター・ウォーズの生誕30周年に向けてハズブロ社も色々と計画していますが、当社でも 5〜6アイテムのオリジナル商品を企画しておりまして、来年の発売に向けて現在進めています。
―― 楽しみにしています。
本日はお忙しいところどうもありがとうございました。
インタビュー収録日:2006年5月12日
聞きて
・JAPAN STAR WARS.COM
・The 501st Legion, Japanese Garrison
■ 白井タカヒコ氏 プロフィール
- 1997年:ハズブロージャパン株式会社入社。マーケティングサービス部にてパッケージ、カタログなどのデザイン面を担当。
- 1999年:株式会社トミー入社。ハズブロ事業部クリエイティブ・サービス部にて引き続きデザイン面を担当。その後、グローバルビジネス本部、開発本部などで商品開発などを担当。
- 2003年:株式会社トミーダイレクトへ転籍。企画部に在籍し、スター・ウォーズを含むボーイズ商品のマーケティングを担当し現在に至る。
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