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クローズアップ インタビュー Part 4:有限会社アド ホリック 代表取締役 堀部俊夫氏

スター・ウォーズ サーガ 完結編となる エピソード3/シスの復讐 が公開された2005年、メインストリームを盛り上げた影の立役者にスポットをあてるインタビュー・シリーズ。

第4回目は有限会社アド ホリック 代表取締役の堀部俊夫氏にお話をお伺いしました。

―― 映画業界に関わるきっかけをお聞かせください。

堀部:
中学生の時、担任の先生が映画好きでして、その先生に影響された何人かの映画好きが集まってはよく映画館に足を運んでおりました。私の場合、高校に進学しても映画好きが続き、大学では映画研究会に所属して、その当時に今では珍しい社会人サークルで「サークル・サントラ」なる集まりに入っていました。

そのサークルと言いますのは、映画のサウンドトラックを聞くサークルで、現在はDVDなどが主流ですが当時は映画を個人で所有できるものはサウンドトラック盤のLPレコードくらいのものでした。定期的に集まっては持ち寄ったサウンドトラックを聞きながら好きな映画を思い起こしながら、この曲はあの場面などと楽しんでおりました。

大学卒業後に広告代理店へ就職した後に、地元のある映画館支配人から試写会をどんどん開催したいとの考えで、スポンサーを探してきてくれと頼まれまして、その代わり仕事はみんな君にだすからという事で、映画業界での仕事をしていくきっかけとなり、その後独立しまして今日に至っています。

―― スター・ウォーズについて思い出はありますか。

堀部:
スター・ウォーズに関しては当時、高校3年生だったのですが「エピソード4/新たなる希望」を 1978年の初日にテアトル東京で観ました。エピソード5、6と皆さんと同じようにハマりまして、私が高校、大学生の時代でした。エピソード6を観終えたのが社会人1年目の年だったので、ある意味、青春時代がスター・ウォーズと共に終わった想いも感じました。

―― その後、スター・ウォーズは新3部作が制作されました。

堀部:
社会人としての生活が始まってから映画からは遠のいた仕事に従事していた期間があったのですが、映画業界に関わる仕事ができるようになった時にスター・ウォーズ復活のタイミングが合いまして、その間の自分の秘めたる想いを仕事として活かすことが出来ました。

―― 近年、映画館へ行く客数は減少傾向にある中でシネコンの進出は増えていますね。

堀部:
現在、映画館が単館で建設されることは極めてまれなことで、ほとんど多くの場合は地方にショッピングモールなどが建設される際などに映画館やスポーツクラブ、スーパー銭湯、ゲームセンターなどがセットで出ます。ひとつの新しいショッピングゾーンの中にシネコンが組込まれていて、開発の時にどこが出ますかと言うと、皆手を挙げるわけです。開発コストも凄くかかっている状況が実情で、肝心要の映画館も所詮は「箱」ですから、では中身の映画はどうなんだというレベルになりますと、当たり年もあればハズレ年もあるわけです。

シネコンという形でスクリーン数が増えることにより配給会社は儲けが出ますが劇場は・・・という状況も少なくありません。間違いなく起こりえてることは、ひとつの映画館のスクリーンの儲けは少なくなってきていますし、おそらく後2年ぐらいでシネコン建設ブームと言うものは終わりが来ると思っています。

―― 全国的なシネコンの普及により、特に地方での単館映画館は厳しい状況と聞きますが。

堀部:
他の外食産業や流通業などをとってみても同様な状況で、小さいところが生き残っていくすべと言うのは、外食産業などは手作りの品をだしたり、マスターが変わり者の店などとしてお客様を惹きつけることが可能なのですが、映画というものは基本的に「ソフト」ですので映画館で特色を出していくのは難しいことだと思います。最近は「名物支配人」というのはいなくなりましたよね。

―― 確かにそうですね。

堀部:
昔は映画館に行けば「名物支配人」というのがどこにもいましたが、今はシネコンという確立化されたシステムの中で若い支配人さんが多く、新しいシネコンが出来れば人事異動していくことも多いです。時代の流れでもありますしそれが全て悪いことではないのですが、人と人の繋がりは以前よりも希薄になってきている時代だと感じることが多いです。

今後は映画館が単純に映画だけを流す時代も終わりがくると思います。例えば、ワールドカップを皆で観ようとパブリック・ビューイングなどをしたり、これまで以上に多目的な空間にする時代が必ず来ると思います。

―― 映画の新しい流れで 3D映画が注目されていますが、基本となるDLP上映設備などの国内事情はどうなっているのでしょうか。

堀部:
最近、建設されているシネコンでは1スクリーンはDLP設備を備えた映画館が多いのですが、DLPにフォーマットされている映画がまだまだ少ないことと、まず何といっても機器の故障が多いのが現状です。DLPで上映しながら不測の事態に備えてフィルムも並行上映している状態ですので、これが安定すれば今後は普及も飛躍的に伸びていくと思います。

―― スター・ウォーズの宣伝で苦労された点はありますか。

堀部:
スター・ウォーズの凄いところのひとつに皆が盛り上げてくれるところがあります。当然、そこに導火線なり仕掛けをする末端で働いてる人間がいるのですが、他の映画に関してはこちら側がパブリシティーなどを作り、話題性を作って新聞なり放送なりで露出していかないと盛り上がってこないのです。スター・ウォーズの場合ですと根強いファンが多いので最低のラインは既に保たれている状態ですし、ルーカスが一番うまかったマーチャンダイジングの部分にしても映画の本編よりも独り歩きしている部分もある中で、少しだけ方向性をつけてあげるだけで良いので、スター・ウォーズの宣伝はある意味、凄く難しいようでいて、他の映画よりは簡単なのかもしれません。ただ、そこから先の数字を摂っていくとなると難しいですし今後の課題となります。

―― 日本におけるスター・ウォーズはどのように感じていますか。

堀部:
海外に出向くことも多いので感じることなのですが、米国ではどこの観光地に行ってもスター・ウォーズのコーナーがあったりして接する機会が多いのですが、日本はそういう文化として根付く強さがないですね。今はいわゆる「オタク」と言う言葉が市民権を得て、スター・ウォーズも最初の段階ではオタクだったのですけどエピソード1からオタクの世界では無くなったように感じます。逆に言いますと一見、層が拡がったように見えるのですが、本当のオタク層が牽引していく力が弱まってしまったようにも感じますし、公開の年だけという盛り上がりに落ち着いてしまっているように思います。

スター・ウォーズは流行りものとして捉えればクラシックに入っていますし、流行りものでない事はたしかなのですが、昨今の映画関係にしても昔の往年の名作と呼ばれるものはそれはそれで1つの存在するカテゴリーなのですけども、ではここ数年間のヒット作映画は皆、寿命が短いです。それはもしかするとそれだけ世の中の流れが早くなってしまっていて、映画館においても公開している期間がもの凄く短いのが現実です。商売的な部分でそうなる面があるのですが、昔でしたら銀座の映画館で1年間ロングラン上映していたとか、女性向けに特化した映画を上映したりなど映画館によって色がありました。

今は大ヒットした映画でも2ヶ月くらいで終わりますし、逆にそれを切らないと DVD発売へ移行できないという事なのですが、そういう意味でスター・ウォーズが終われば、次の映画とどんどん移っていってしまって、ひとつの物をじっくり育てあげるだけの土壌がないですね。

上映の方法にしても、今は大作映画をひとつのシネコンで何スクリーンも同時に流すような形が主流なので当然のことながら、あっと言う間に皆観てしまうわけです。公開後、2ヶ月も経てば話題にもならなくなる状態ですし、また次の作品へ入ってしまっているわけです。情報化社会の中で全てのものが早く公開できるのは良いのですが、ひとつの作品を大事に暖めてそれに対してのファンを育てることが非常に希薄になっているように思います。

―― 501stへ御連絡いただいたのはどこよりも早く熱かったですね。

堀部:
きっかけは沖縄へ行っていました際に出先で垣間見たスポーツニュースで、新庄選手のダース・ベイダー始球式が放送された時でした。最後のスター・ウォーズとなるエピソード3を公開に向けて盛り上げる策を練っていた時でしたし、業界誌でもトイザらスさんで行われたイベントの模様が特集されていて 501stの皆さんが紹介されていましたので、迷わずこれだと思いました。とにかく自分の目で一度確かめたい一心で急遽、翌日東京に戻り出演されていたイベントで拝見させていただきました。

―― 那須ハイランドパークでのレゴとのコラボレーションについて聞かせてください。

堀部:
那須ハイランドパークの「レゴスタジアム」にはスター・ウォーズ レゴを発売しているレゴ・ジャパンさんが展開されています。レゴブロックの素晴らしい所は作ったら壊してまた作るところにあります。創造力が無限に続くという事です。現在、「レゴスタジアム」には等身大のダース・ベイダーやR2-D2、ヨーダが展示されています。来年はサプライズがあるかも?(今は内緒)。

―― 今後の抱負を聞かせていただきますでしょうか。

堀部:
エピソード3が完結して本当にこれから一番懸念されているのは 3D版になり、後はTVシリーズがどうなっていくのかとなった時に、スター・ウォーズを公開時だけの一過性なブームだけに終わらせないように 501stの皆様と一緒に頑張っていきたいと思います。

本日はお忙しいところどうもありがとうございました。

インタビュー収録日:2006年5月28日

聞きて
・JAPAN STAR WARS.COM
・The 501st Legion, Japanese Garrison

■ 堀部俊夫氏 プロフィール

  • 1960年生まれ。
  • 1978年:テアトル東京にて「スター・ウォーズ」と運命の遭遇。
  • 1982年:大学卒業後、地方広告代理店勤務 - 映画不毛の10年間を過ごす。
  • 1997年:独立。現在の「有限会社 アド ホリック」を創業。映画興行関係の広告宣伝を通じ、趣味と実益を両立させ現在に至る。
  • 20XX年:死去。501stのトルーパー達に見送られながら、エピソード2の「アクロス・ザ・スター」をBGMにフォースと一体になる。

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