スター・ウォーズ サーガ 完結編となる エピソード3/シスの復讐 が公開された2005年、メインストリームを盛り上げた影の立役者にスポットをあてるインタビュー・シリーズ。
第2回目は20世紀FOX映画 宣伝部チーフ・パブリシストの鷲谷 一氏にお話をお伺いしました。
―― 昨年を振り返って、エピソード3のプロモーションとしてまず、さっぽろ雪まつりから始まりました。
鷲谷:
2004年の夏くらいからルーカスフィルムと会議を行なっていて、プロモーションのアイデアを出していく中で、今回はダース・ベイダーを使える事と暮れにはエピソード3の予告編も出ていたタイミングもあって行なうことになりました。また、プロモーションをしていく上でルーカスフィルムからオフィシャルイベントやプロモーションでは501stを使うようお墨付きのお達しがありましたので日本部隊の皆さんには頑張っていただきました。
―― まさかあのような形で雪まつりに行くとは思いませんでした。
鷲谷:
そうですよね。私も初めて行ったのですが、雪まつりの後に札幌駅ビルの劇場でプロモーションも行なったりと色々と慌ただしかったですが、良い形でプロモーションのキックオフとなりましたのでロードショー公開に向けて波に乗れました。
―― その晩の打ち上げの際に日本ハム始球式の話が出ましたね。
鷲谷:
話は以前から札幌支社のスタッフと話してはいて、出来れば面白いねという事で進めていました。スケジュール的にゴールデンウィークで、セパ交流戦ということで対戦カードが日本ハム 新庄選手の古巣である阪神ということで盛り上がりも期待できるため開幕戦に決めました。新庄選手のマネージメント会社の社長さんがスター・ウォーズの大ファンということもあって話しがまとまりました。
―― 宣伝効果はどうだったのでしょうか。
鷲谷:
これまでにも色々な映画がタイアップでやっていたりするのですが、実のところマスメディアであまり記事になることもなく。来日した役者さんが始球式をした際にも芸能関係のマスコミで少々取り上げていましたが、私どもはそれ以上の宣伝効果を出さないといけませんし、野球選手本人がキャラクターとなって投げることで、スポーツニュースなどでも大々的に取り上げられましたので宣伝効果は大きかったです。ちょうどエピソード3が全米公開前でこれから盛り上げていこうという時期で効果絶大でした。
―― エピソード3のプロモーションに関してはスポーツ関連にも注力するようルーカスフィルムから指示もあったようですが。
鷲谷:
そうなのです。米国ではこれまでにも2004年のワールドシリーズでFOXチャンネルがやっているのですが、シカゴ・ホワイトソックスの応援を帝国軍キャラクターで行なった前例もありまして、日本側も何かできないか考えていました。ダース・ベイダーで始球式という構想は新庄選手がサンフランシスコ・ジャイアンツに在籍していたこともあってルーカスフィルムも理解が早く許可をいただきました。
―― 6月に入りリック・マッカラム氏の来日記者会見がありました。
鷲谷:
3日程の滞在でした。当初はリック・マッカラム氏と役者を誰かひとり来日させる予定だったのですがスケジュールの折り合いがつかず、単身での来日となりました。ちょうど到着した日にヴァージンシネマズ六本木ヒルズでイッキ見企画を上映しており、舞台挨拶の要請がありまして成田空港から直行してこなし、翌日からはマスコミ取材を受けていました。
―― そして、ジャパン チャリティー プレミア試写会の開催。場所はお馴染となった東京国際フォーラムでした。
鷲谷:
エピソード2が終わって2003年には東京国際フォーラムを仮押さえしていました。エピソード3は早い段階でロードショー公開日が見えていましたので日取りも早く決めることが出来ました。他映画の試写会は話題作りの為にこれまでにも武道館や球場で行われたりしていますが音響などの点からルーカスフィルムの許可は下りませんし、東京国際フォーラムはエピソード1 ファンフェスティバルの際に音響をドルビーEXで開催できた実績でお墨付きをいただいていたので問題なく開催が決まりました。今回は初の試みとして、DLP上映とライセンシー会社協力によるスター・ウォーズ ライセンス・グッズ 展示販売会を同時開催しました。
―― スター・ウォーズは他映画の試写会と比較しても別格と聞いていますが。
鷲谷:
スター・ウォーズは試写会抽選の応募率がケタ違いに多いのと普通、映画の試写会招待状の回収率というものは60%程度なのですが、スター・ウォーズの場合、90%以上の回収率ですので凄さを感じます。
―― 当日はサプライズやハプニングがありました。
鷲谷:
リック・マッカラム氏は当初、3回目の上映時だけ舞台挨拶する予定だったのですが本人の希望あって全回出演することになりました。来場されたお客様には喜んでいただけたと思います。ハプニングでは2回目の上映時に機材トラブルが発生してしまいました。DLP上映にあたり2社の機材でセッティングしていましたので急遽、DLP機材を切り替えての上映だったのですが画質の違いがわかってしまいました。
―― え!フィルム上映に切り替えたのではなかったのですか? 誤解しているファンも多いと思いますが。
鷲谷:
いえ、DLPによる切り替えで上映したのですが、発色の違いが大きく見られました。同じデジタル上映でも機材によってやはり画質は変わりますね。
―― 試写会では児童養護施設の子供達へ招待席を確保していただいてどうもありがとうございました。
鷲谷:
あれは感動的で良かったですね。本来、スター・ウォーズの試写会はチャリティーで行なっていますので御協力させていただきました。たくさんの子供達に喜んでいただけて良かったです。
―― 翌週から先先行公開、先行公開となりました。
鷲谷:
今は劇場側の発券システムも変わって、事前に全席指定で予約できる時代になりましたので、エピソード1公開時の有楽町マリオンの様に映画館を1周してしまうくらいの長蛇の列は見られなくなりました。それが当社の若いスタッフにしても、そのような大行列を目にしたことがないので残念ではありますが、興行的には大成功でした。
―― ロードショー公開直前に迫り、ルーカス監督らも来日となりました。会見場は凄い数の報道陣で写真撮影は殺気立っていましたね。
鷲谷:
いち映画監督の記者会見で700人を越える報道陣が集まるのもルーカス監督ならではと言えます。ルーカス氏も3回目の来日でしたし、一緒に来日された製作プロデューサーのリック・マッカラム氏、アナキン・スカイウォーカー役のヘイデン・クリステンセン氏、パルパティーン役のイアン・マクダーミド氏、皆さん紳士なので仕事としては楽でした。
―― 裏話はありますでしょうか。
鷲谷:
ルーカス氏は基本的に家族を連れて来日されますので、今回も息子のジェット君と娘さんのアマンダさんを同伴していました。ジェット君はヘイデン氏にとてもなついていて一緒に買い物に行かれていましたね。アマンダさんはボーイフレンドとK1を観に行かれたりしていました。
―― 公開初日には日劇PLEXで初日舞台挨拶が行われました。
鷲谷:
ルーカス氏家族は日本を発っていて、ヘイデン氏は夕方の便で帰る予定になっていました。イアン氏がまだ残っていることがわかり、急遽、ヘイデン氏とイアン氏二人での舞台挨拶が決まりました。エピソード3ではメインを飾る師弟コンビが登場とあって満員の劇場で歓声も大きかったです。舞台挨拶が終わってから食事を用意していたのですが、ヘイデン氏は自分ひとりで大丈夫とのことで、誰にも気づかれずにハンバーガー屋で食事を楽しまれ帰国されました。
―― ロードショーが始まって、DLP上映している劇場が軒並みトラブルとなりフィルム上映で残念でしたが。
鷲谷:
DLPはまだまだ安定していないのが現状ですね。他映画のDLP上映でもトラブルは多いのですが、スター・ウォーズは特に熱心なファンが多いので話題となり目立ってしまいます。専属機材スタッフが来日して調整した試写会の1日3回上映でさえも安定していませんでしたし、劇場側も投資して機材を導入してもすぐに新たな機材がリリースされるのが実情で、設備投資に追いつかないのもなかなか普及しない要因であると思います。
―― 501stとしてはプロモーションのお手伝いは8月が山になると想定していましたが、大晦日の紅白歌合戦まで出動するとは思いもよりませんでした(笑)
鷲谷:
2005年のまさに締めくくりとなる出演でしたね。国民的番組でのスター・ウォーズの露出と言うことでルーカスフィルムから出演許可をいただいて放送後はオンエアテープを送りました。
―― 振り返ってみてどうでしたか。
鷲谷:
エピソード3のプロモーションはシリーズ完結編という事もあり、ルーカスフィルムも規制をこれまでになく緩めていましたので様々な展開を試みることが出来ました。この業界でスター・ウォーズには特別篇から関わって来まして、エピソード1、2、3と完結してとても感慨深いものがありました。数多くある映画の中でもファンに永続して愛されていることはスター・ウォーズならではと感じています。
本日はお忙しいところどうもありがとうございました。
インタビュー収録:2006年5月25日
聞きて
・JAPAN STAR WARS.COM
・The 501st Legion, Japanese Garrison
■ 鷲谷 一氏 プロフィール
- 1965年生まれ
- 1997年:スター・ウォーズ 特別篇からスター・ウォーズの宣伝に携わる。
- 1999年:スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナスの宣伝を担当。
- 2002年:スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃の宣伝を担当。
- 2005年:スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐の宣伝を担当。その他、20世紀FOX映画にて数多くの配給映画宣伝に携わり現在に至る。
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